弘前大学

高純度リチウム資源の高速?省エネルギーでの採取?回収技術

2024.02.21

プレスリリース内容

本学研究者

弘前大学大学院理工学研究科 教授 佐々木 一哉(弘前大学リチウム資源総合研究機構 兼任)(「研究者総覧」の研究者ページへ)
弘前大学リチウム資源総合研究機構 助教 新村 潔人(「研究者総覧」の研究者ページへ)

本件のポイント

  • リチウム資源採取?回収の為の新たな電気化学ポンピングシステム技術 1) を開発しました。
  • 塩湖や地下水中および使用済みリチウムイオン電池から、金属不純物を全く含まない高純度なリチウムを高速かつ経済的に採取?回収することが可能となりました。
  • 類似な従来技術の464倍の高速な採取?回収が確認され、原理的にはリチウム回収速度を無限に増大できることが示されました。

発表内容

弘前大学大学院理工学研究科?弘前大学リチウム資源総合研究機構兼任の佐々木 一哉 教授、弘前大学リチウム資源総合研究機構の新村 潔人 助教らの研究グループは、2つの外部電源、3つの電極およびリチウムイオン伝導性固体電解質隔膜から構成される新たな電気化学ポンピング技術を考案しました(図1)

本研究では、開発した技術を用いることで、原理的には、不純物イオンを全く含まない極めて高純度なリチウムを無限に大きな速度で回収できることを示しました。また、類似の技術と比べて大幅にエネルギー消費量を削減できることも示しました。

この技術は、電気自動車等に使用されるリチウムイオン電池や将来の基幹エネルギーシステムとして期待される核融合発電のためのリチウム資源の、経済的かつ工業的な獲得に貢献すると期待されます。 本研究グループは、まずは新たに導入される欧州電池規則によるリチウム資源リサイクル義務への対応を可能にする為、既に実用化研究の段階に入っています。

本研究成果は、Springer Natureから出版される『Communications Engineering』誌にオンライン掲載されました(2024年2月11日)。論文タイトル:”A three-electrode dual-power-s upply electrochemical pumping system for fast and energy efficient lithium extraction and re covery from solutions”。国内特許および国際特許が出願されています。

図1.考案した2電源3電極式電気化学ポンピングセルの構造と反応の模式図。(Communications Engineeringから転載)図1の左(Anode側)の浴に塩湖水や廃LIBsを溶解した水溶液などを入れ、電気化学ポテンシャル差 2) を用いて右(Cathode側)の浴中の水にリチウムイオンを移動?回収します。電解質隔膜の両側表面に形成された2つの電極(First electrodeとSecond electrode)ではO2ガス、最も右の電極(Third electrode)ではH2ガスも発生するため、これらのガスの供給も可能です

用語説明

  • 1)電気化学ポンピング技術:所望のイオン(今回はリチウムイオン[Li])が内部を移動できる電解質製の隔膜の表裏両面間に電気化学ポテンシャル差を与えて、そのイオンを一方から他方へ移動させる技術。
  • 2)電気化学ポテンシャル差:電位の違い(電位ポテンシャル差)や濃度の違い(化学ポテンシャル差)のこと。電位ポテンシャル差は、電解質隔膜の表裏の両面に電極を配置し、この電極間に外部電源を用いて電圧印加することで与える。今回の濃度差は、それぞれの浴中に入れた溶液中のLi濃度の差。

詳細

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プレスリリースに関するお問合せ先

弘前大学大学院理工学研究科?弘前大学リチウム資源総合研究機構 兼任 
教授 佐々木 一哉
TEL:0172-39-3627
E-mail:k_sasakihirosaki-u.ac.jp