弘前大学

漆器樹産合資会社「六角重」及び「企業広告」を発見

2025.05.15

プレスリリース内容

発表のポイント

弘前大学教育学部附属次世代ウェルビーイング研究センターの髙橋 憲人助教が、史上初の津軽塗製造会社「漆器樹産合資会社」(1880年創業)の六角重箱と、1890年代に印刷された同社の企業広告を発見しました。

本件の概要

「漆器樹産合資会社」は、1880(明治13)年に弘前藩士の山田 皓蔵らが設立した、史上初の津軽塗製造会社です。店舗は、元寺町にあった旧弘前市役所の向角にあり、2017年まで続いた「田中屋」に受け継がれました。同社は、士族授産を目的としており、社名の「樹産」は「授産」に掛かっています。実際に、1884(明治17)年には、士族授産対策として支出された政府の勧業資本金5万円を借り、漆器製造の基盤を整えています。同社の漆器製造には、青海源兵衛(代々弘前藩の塗師職を務めた青海家の当主)の弟子や孫弟子たちが参画しました。

今回発見された六角重は、福岡県の古物商がネットオークションに出品していたものを、髙橋助教が落札しました。髙橋助教は、2021年にも、香川県の古物商が扱っていた幕末期の漆塗折敷を弘前に里帰りさせた実績があります(その後の調査で、津軽家旧蔵の青森県重宝「津軽漆塗手板」と同一作者であることが判明)。

この六角重は、1890年の「漆器樹産会社」創立10周年を記念してデザインされた企業広告が同封されていることから、この頃の制作と考えられます。1890年はちょうど、同社が前述の政府からの借入金を完済した年でもあります。重箱は、木地の造りや塗りの模様も手が込んでおり、海外や県外向けの高級品として製造されたことがうかがえます。また、企業広告は和文英文併記で印刷されており、津軽塗に欧米向け輸出品としての役割が期待されていたことが分かります。その他にも、「から塗」が現在と違って「殻塗」と表記されている、「殻塗」という呼称を普及させようとしていたことが読み取れる、デザインにウルシの木の意匠が使われているなど、広告自体も歴史資料として価値が非常に高いことが分かります。

六角重

漆器樹産合資会社製津軽塗 六角重

漆器樹産合資会社 企業広告

漆器樹産合資会社 広告

詳細

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プレスリリースに関するお問合せ先

弘前大学教育学部附属次世代ウェルビーイング研究センター
助教 髙橋 憲人
TEL:080-1674-8911
E-mail:takahashi.khirosaki-u.ac.jp